探偵が調査は違法ではないのか?

法律知識

探偵が顧客からの依頼を受けて行う調査については、違法性がしばしば問題となっています。結論から述べると、彼らが行う調査は「探偵業の業務の適正化に関する法律」に抵触していない限りは問題はありません。したがって、違法かどうかは彼らが行った調査の内容や手法を見て判断することになります。

例えば、依頼者の自宅や勤務先の周辺の人や日常で関係のある人物に聞き込みを行うとします。このとき、刑事や警察官とみられるような格好で近づいて聞き込みを行おうとすると「称号詐称、標章等窃用の罪」に問われます。資格や称号などを持っていない人が法令で規定された、あるいはそれによく似た制服や標章などを用いる行為や、架空の資格や称号をでっちあげて用いる行為は軽犯罪法により罪になります。

また、不適当な聞き込みを行うことによってあらぬ噂がたち、その結果調査対象者の社会的な信用が失われてしまった場合は刑法の信用毀損罪に、所属する法人の業務に支障をきたす事態になった場合は業務妨害罪に問われます。探偵にとって最も基本的な調査手法である聞き込みひとつでも、注意しなければならないことはたくさんあります。

聞き込みと並んで用いられることが多い張り込みも、手法によっては違法とみなされます。例えば、対象者の自宅や勤務先の近くにアパートやマンションがある場合、張り込みをするのに絶好な場所であったとしても、物件の所有者や管理者からの許可を得ていなければ張り込むことはできません。住民ではない者がアパートやマンションの敷地内に入ると、刑法の住居侵入罪に問われることがあるからです。

空き家についても、誰も住んでいないからといって勝手に中に入って張り込みに用いるのは軽犯罪法の潜伏の罪に問われます。また、住民に見つかって退去を命じられたとき、言うことを聞かずに居座ったり、いったんその場から離れて、人気がなくなったらまた戻る行為を繰り返すのも、不退去罪に問われる可能性があります。

探偵はときには対象者を尾行することがありますが、相手に気付かれた場合ははすみやかにあとをつけるのを諦めなければなりません。相手に気付かれているのにもかかわらず尾行を続けた場合、軽犯罪法の追随等の罪やストーカー規制法違反、自治体の迷惑防止条例違反が成立してしまうからです。

この他にも、対象者のもとに届いた封書を勝手にあけてしまう行為や、依頼者本人や委任を受けた者を装って役所から証明書などの書類を手に入れようとする行為など、探偵の調査の中で違法とされうる行為はたくさんあります。見方を変えれば、彼らは法令違反のリスクを抱えながら相手の素性や行動などを調べているということになります。

なお、罪に問われる可能性があるのは、探偵本人だけではありません。依頼者が調べ方に違法性があることを認識していた場合は、依頼者本人も処罰の対象となる可能性があります。調べ物を頼む方にもそれなりにリスクがあるということは、留意しておきましょう。