夫婦間の契約

夫婦間の契約 法律知識

婚姻前に財産契約を結ぶ

婚姻前に夫婦間の財産契約を結ぶことが可能なのです。日本ではあまり馴染みがないようにも思えますが、欧米では一般的に行われているようです。
婚姻中にできる契約というものには限りがあり、財産に関してはこの夫婦財産契約を結んでいない限り民法の定めに従う形となります。
契約内容に合意ができれば、戸籍筆頭者となる予定の方の管轄する法務局で、夫婦財産契約登記を行い完了となります。

夫が収入の大半を自分の趣味につぎ込んでしまい、それを咎めようものなら「俺が稼いでいる金で暮らしているんだろ!」と言われ、何も言い返せない妻。ありがちな光景ですよね。そこで夫婦財産契約です。「婚姻中、夫の名義で得た財産は全て夫婦共有のものとする」という契約書を作成しておけば、専業主婦であろうと、夫が得た財産は全て共有財産となります。
ちなみに「婚姻前に所有していた財産も全て夫婦の共有財産とする」と書き加えても有効です(例えば夫となる男性が、婚姻前から土地・家屋を持っていた場合、それは夫の特有財産となるため、離婚の際に財産分与の対象とはならない)。

この夫婦財産契約は、夫婦関係が破綻し離婚をしてしまった際にも大変有効です。夫婦が離婚をするときには、「財産分与」といって基本的に共働き・専業主婦を問わず、夫婦が婚姻中に得た財産の全てを離婚時に分け合うのですが、結婚前に夫婦財産契約を結んでいない場合は、民法の定めに則って財産分与がなされます。基本的には5割づつ分け合うのですが、専業主婦には色々と不利な条件があるようです。

  • 「夫婦の一方が婚姻前から有していた財産、および婚姻中に自分の名前で得た財産は、その者の個人的財産となる(民法762条1項)」
  •  

    「夫婦どちらのものかわからないものは、共有財産とする(民法762条2項)」

・・・とされているため、例えば土地や家屋が夫名義になっている場合、基本的には夫の特有財産とみなされます。そこから妻の「寄与度」を計っていくのです。つまり内助の功です。
しかし判例では、内助の功だけですと共有には不足とされており、一般的に内助の功の評価額は3~4割くらいといわれております。

財産分与などの話し合いをするということは、既に夫婦関係が破綻しているということですから、話し合いもスムーズには進まないでしょう。離婚についての話し合いはとても精神的にも疲労するといわれております。また「顔も見たくない」「早く離婚をしてしまいたい」などという理由から、お金に関する話し合いもせずに離婚をしてしまい、その後、経済的に苦労するという話などもよく聞きます。これから結婚をする方は、婚姻前の夫婦財産契約なども視野に入れ、検討されてみてはいかがでしょうか?

「財産分与」や「内助の功」といった話題ついでに、2007年の4月より始まる年金の分割制度についても簡単にお話ししておきます。(詳しくはリンク先をご覧ください)
年金分割とは離婚する際の話し合いにより厚生年金を分割できるようにする制度です。対象となるのは過去の婚姻期間に支払った保険料に対応する厚生年金で、最大で2分の1まで分割することが出来ます。ただし07年3月以前に離婚すると、この制度の適用は受けられません。また夫婦それぞれの基礎年金は分割の対象になりません。

結婚(婚姻)契約書

さて最近では、婚姻中に関する様々な事に対して、契約を結ぶ夫婦が増えているのだそうです。この契約は、主に日常の家事や日々の生活に関することが主で、家事の分担や子供の教育方法、また親との同居などを中心に構成されているようです。その他には、浮気などに関する取り決めや、誕生日や記念日には必ず贈り物をする取り決めなど、契約内容は様々です。中にはプロ野球選手のように、1年や2年で契約更改を行う夫婦もおり、その時に契約内容を見直す夫婦もいれば、逆に相手から自由契約を宣告される人もいるようです。何かあったときのために訴えるための証拠というよりも、どちらかといえばお互いの信頼関係を深め合うとか、よりよい結婚生活を営むためにお互いを多少縛るといった性質のものが多く見られます。

夫婦間の契約はいつでも取り消せる?

民法第754条には夫婦間の契約の取消権についての規定があり、「夫婦間で交わした契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方からこれを取り消す事ができる。ただし、第三者の権利を害する事ができない」と定めております。ではこの規定が適用されるのは、下記4項目のうちどれでしょう?

  1. 婚姻生活が円満な状態で契約をし、円満なときに取り消しをする場合
  2. 円満な状態で契約したが、破綻してから取り消した場合
  3. 破綻している状態で契約したが、円満に戻ってから取り消した場合
  4. 破綻している状態で契約し、破綻しているときに取り消す場合

判例では「民法754条にいう“婚姻中”とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなく、形式的にも、実質的にもそれが継続している事をいうものと解すべきである」としています。つまり契約の取り消しは、夫婦仲が円満な状態でのみ有効であり、婚姻が破綻してからの契約取り消しはできないとの判断です。

また「夫婦関係が、破綻に瀕しているような場合になされた夫婦間の贈与はこれを取り消しえないと解すべき」という判例もあり、これは契約を結んだ時期を問わず、夫婦関係が破綻している状態での契約取消はできないと判断しています。

これらの判例は上記肢の2、4に該当します。では3のケースではどうなるのでしょうか?
このケースもこれまでと同様、取り消すことができません。

破綻した状態での契約取り消しはできないと述べてきましたが、一旦取り消しが効かない状態となった以上、それは確定的なものとみなされ、その後どういう事情になろうとも、取り消しの効かない状態は継続されます。したがって、答えは1となります。

最後に、夫婦関係が破綻していて夫婦の契約取消権が認められない状態であっても、口約束だけの贈与はいつでも撤回できますので(民法第550条)注意が必要です。