張り込み業務の裏側

張り込み業務の裏側 探偵

探偵が一般の人から依頼される仕事の中でも特に苦労が多いといわれているのが、調査対象の素性などを調べるために一定の場所にある程度長時間とどまる「張り込み」です。その理由は、地味な仕事な割に体力・集中力・観察力が多く必要であり、依頼者に満足してもらえるような結果にならないことも少なくないためで、探偵業をはじめた若い人の多くが脱落していく理由にもなっています。

張り込みの手法にはさまざまな種類がありますが、特に大変なのが「立ち張り」です。これは路上などのひと目がつかない場所から立った状態で対象を調査するもので、テレビドラマやバラエティー番組のコントの中で見たことがある人が多い方法でしょう。この立ち張りが特に苦労するのは、真夏や真冬に依頼を受けて張り込むことになったときです。

真夏は地域によっては夜間でも気温も湿度も高く、長時間蒸し風呂のような空間に身を置くことになるため体力が消耗しやすくなります。このような時期の立ち張りでは、ガムや栄養ドリンクといった眠気対策だけでなく、水分補給などによる体力や気力の維持が必須であり、怠ると熱中症などにかかって仕事ができなくなりかねません。一方真冬は、探偵の活動のメインとなる夜間の気温が氷点下を下回ることが多く、ガッチリ着込んでいたとしても立ち張りの性質上体温がどんどん低下していきます。

日ごろの張り込みのようにじっと観察しているだけではすぐ身体が冷たくなり、ターゲットが急に動き出したときにも対応できなくなるため、身体をこまめに動かしたり、温かい飲み物や食べ物の摂取は欠かせません。たくさんの成果が得られれば、このような過酷な状況下での張り込みの苦労が報われる形になりますが、何も進展がない状態が続くと仕事のモチベーションへの影響も出てきます。
探偵が張り込みで苦労するのは、場合によっては調査対象だけでなく張り込む場所の周辺にも目を配らなければならないのも理由です。

住宅街や商業施設が多い場所で張り込んでいると、全く関係ない人から不審者扱いされることがあります。どの探偵も不審に思われないように注意を払っていますが、職業柄どうしても行動が怪しく見られがちです。見かけた住民から声をかけられれば、説明をして納得をしてもらうという方法をとれますが、迂闊にやっていることをそのまま説明することはできません。

住民が調査対象者と何らかのつながりを持つ人だった場合、張り込んでいることを隠さずに伝えてしまうと調査対象に知られてしまい、対策がとられてしまうことがあるからです。また、みかけた住民から警察に通報されてしまうことがあります。警察が駆けつけると職務質問が始まりますが、ときどき名刺を見せて、何をしているかを説明しても納得してもらえないことがあり、その場合は張り込む場所を移動せざるを得なくなります。

探偵による調査料金はどこもそれなりに高額ですが、上記の張り込みの例のように非常に手間隙がかかっていると考えれば、その高さが少しは理解できるでしょう。